旅するコトバ

小さな世界の、小さなトークイベント

巡りあわせ

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「 私が10歳のとき、母が他界したんです。40歳でした。
  大好きだった母の影響は、ずっとどこかにあって。
  じつは私、子供ができる前は
    長生きしたいとは思ってなかったんです。
  綺麗なまま亡くなった母への憧れがあって。
  でも子供ができて、
    自分は絶対に長生きしないといけないと思った。
  それからは母が亡くなったことを
  とにかく無駄にしたくないって考えるようになりました。
  どうして母は早く亡くなってしまったのか、
  その疑問からfato.の食事への考え方は
    始まってると思います 」
 
 
相原隆司さん、智子さんのご夫婦が営んでいる、
東京都練馬区にあるカフェ『 fato. 』。
 
イタリア語で「 巡りあわせ 」を意味するこのお店で、
記念すべき『 旅するコトバ vol.001 』を開催しました。
 
イベントの最初には、
fato.をオープンする前に出逢った方が作られているという
おからこんにゃくを挟んだ
「 旅するコトバ特製コッペサンド 」を。
 

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相原夫妻は共にアパレル業界で長年働いてきていました。
カフェをやろうと思っていたわけでもなく、
飲食業をやってきたというわけでもなく。
 
 
「 一度うちでホームパーティーをやったときに、
  こうしたみんなが集まれる場所を作りたいね、
  って思ったのが、カフェをやるきっかけでした 」
 
 
「 僕なんか料理とか全然やってきてないから、
  パルコブックセンターでいろいろな本を見てて。
  で、ベーグルでも作ろうかなって思ったんですよね(笑)
  なにせ最初は包丁に慣れるところからでしたから 」
 
 
「 怖さはやっぱりあって、
  オープン前日、僕は泣きました。
  知らないうちに張り詰めてて。
  トモのお父さんから、
    お前大丈夫か?って電話があって。
  そしたら急に涙がブワーって流れちゃって 」
 
 
「 わざわざ足を運んでくれる人たちを大事にしたいから
  駅から徒歩8分ってところにしたんだけど、
  実際来てくれるのかって不安がやっぱりあって。
  でもオープン当日には、
  ふたりじゃまわらないくらいお客さんが来てくれました。
  ほんとありがたいことに、
  それからなんとかやれてきてる感じですね 」
 
 
イベントに参加されたお客さんが
「 お店に入った第一印象は“ 包容力があるなぁ ”でした 」
と言われたように、このお店の雰囲気はとてもとても柔らか。
 
それはきっと、
男女問わず人に惚れやすいというおふたりの雰囲気そのもの。
 
誰に対しても、何に対しても、
とにかくオープンで、まっさらな目で見つめるのです。
 
なので、自然と仲間が増えていっては、
イベント出店や文章を書くことなどの
新しい展開に巻き込まれていっています。
 
そんなふたりの譲れない部分。
 
 
「 ビーガンカフェとかマクロビカフェっていう
  枠組みを勝手に作られて、
    そう言われるのはすごく嫌なんです。
  健康志向の料理を出してはいるけれど、
    うちはそういう枠組みじゃない。
  あえて言葉にするなら、
    野菜の可能性を追い求めるということ 」
 
 
「 極端に言ったら、
    コンビニ食だって否定しないです。
  確かにケミカルではあるけど、
    震災とかがあったらすごく助かるんだから 」
 
 
「 食べログとかでマクロビカフェとか書かれると
    消しゴムで消したくなる(笑) 」
 
 
「 のめり込みすぎると
    身体に対してストレスがかかると思うんです。
  だから枠組みを決めずにご飯を出していきたい 」
 
 
自分たちの可能性にも枠組みを決めず、
新しいことは常にしていこうというスタンスを持つおふたりは、
2016年の8月、こんな思い切ったことを試みました。
 
 
 8月は飲食にとっての閑散期で、
    どうしても客足が遠のいてしまうんです。
  そんなときに、ゆっくりな空間にふたりでいて
    暇だねなんて言ってたら気持ちが腐ってくる。
  だったら楽しいことをした方がいい。
  彼はサーフィンが好きだし、私はお店に立ってるのも好き。
  だから8月の1か月間は私がお店をやるから、
  海の近くに住み込んでサーフィンやってきなよって 」
 
 
そうして、お店に残ることになった智子さん。
 
 
「 私は私で楽しかったんです。
  お店のすべてを自分が決めてやれたことの充実感や、
  お店が混んだ状況をひとりでさばききった達成感や。
  息子のノイもお手伝いしてくれて。
  それにはちゃんとお給料も払ったんです。
  で、ノイとふたりでキャンプに行ったときには、
  そのお金でお土産を買うという人生経験もさせられた。
  普通とは違う体験ができて本当に楽しかったんです 」
 
 
千葉県の海でサーフィン中心の生活を送った隆司さん。
 
 
「 今までは、
    休みの日に海に入って終われば東京に帰ってきてたし、
  サーフィンって自然相手だから
    波が悪かったら行って損したと思うときもあった。
  だから、朝も夕方できる環境は本当に楽しかったんです。
  でもそれよりも、
    サーフィンが生活の一部になるという時間を
    1か月経験させてもらったこと自体の方が大きくて 」
 
 
「 お金が本当になかったとき、
  現地の若いサーファーの子たちに
    カレー作ってよと言われて、
    お店のカレーを作ったんです。
  そしたらいろんな人が食べにきてくれて。
  で、食べ終わったら、
    みんな何も言わずに千円を置いていってて。
  すぐに “ これはもらえないよ ” と言ったら
  “ もらわなくてどうするんすか、困ってるんでしょ ” って。
  それから正直になれたんです。
    困ってるから助けてほしい、を言えるようになった。
    それが心から嬉しかった 
 
 
 トモとは電話で毎日話してて、
    ああ、楽しんでるなーって。
  お互い全然違う生活を送ってるけど
    繋がってるなぁと思えてました 
 
 
そして、ふたりが共通して言っていたこと。
 
 
 楽しそうな人にしか、
    人は寄ってこないよなって思うとこがあって。
  だからまずは、自分たちが楽しまないとって 
 
 
それがきっと
 巡りあわせ 」の始まりになっているんでしょうね。
 
最後に、
おふたりがイベント内でお薦めしてくれた本を
紹介させてもらいます。
 
 
 隆司さん
 「 ジャック・ジョンソン 終わりなき夢の波間に 
   ( マーク・シャピロ、P-Vine BOOks 
   生きていることをリアルに楽しんでいる親と子供。
     これからの自分たちの指針にもなるかなと。

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●智子さん
 「 ママが生きた証 
   ( 小松武幸、講談社 
  自分の原点を思い出させてくれる本。
    涙なしでは読めません。

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相原隆司さん、智子さん、ノイ君、

そして参加してくださったみなさん、

どうもどうもありがとうございました!

 

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